宵待草
風のざわめきを足音に
聞き違えては席を立つ
それは怖くて愛しくて
死の訪れを待つようで
灯をつけずに過ごすのは
光が私を暴くから
明るい場所が好きだった
無邪気な頃が嘘のよう
幸福な記憶など
消し去ってほしいの
黒く不躾なあなたの腕で
幻影の家
幻影の部屋で
今宵もあなた
待ち続ける
普段のあなたは違う町
明るい家で笑う声
周囲の人の祝福と
安らぎの中で暮らしてる
疲れた夜だけふらり来て
痩せた私を抱き締める
「お前だけさと」口先の
誓いを何度も手渡して
あなたの嘘を
残らず飲み干す
もっと渇くとわかっていながら
幻影の家
幻影の部屋で
今宵もあなた
待ち続ける
幸福な記憶など
消し去ってほしいの
黒く不躾なあなたの腕で
幻影の家
幻影の部屋で
今宵もあなた
待ち続ける
* 幸福:しあわせ
* 幻影:まぼろし
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